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チック症を正しく理解する:最新ガイドラインと研究動向からみる診断・治療・支援の実践知

2025/10/8


目次
はじめに——「チック」は珍しくないが、誤解されやすい
チック症の基本——用語と分類をサクッと整理
なぜ起こる?——原因と増悪因子の現在地
2024–2025年のトピック1:機能性チック様行動(FTLB)をどう見分ける?
2024–2025年のトピック2:ガイドラインは「まず行動療法」へ
具体的な治療の選び方——「困りごと」起点の実践フロー
学校・家庭で今日からできる支援
誤解を解くQ&A
研究最前線のハイライト(2024–2025)
受診前にまとめておくと良いこと(チェックリスト)
保護者・教育現場・本人へのメッセージ
参考リソース(信頼できる出発点)
まとめ

はじめに——「チック」は珍しくないが、誤解されやすい

チック症の基本——用語と分類をサクッと整理

  • チック(tic):突発的・短時間で、反復する運動または発声。しばしば「プレモニトリー感覚(前駆感)」というムズムズ感が先行し、それを和らげるためにチックが出る、と表現されます。
  • 運動チック/音声チック:まばたき・顔しかめなどが運動チック、咳払い・鼻鳴らし・発語などが音声チック。

なぜ起こる?——原因と増悪因子の現在地

2024–2025年のトピック1:機能性チック様行動(FTLB)をどう見分ける?

2024–2025年のトピック2:ガイドラインは「まず行動療法」へ

具体的な治療の選び方——「困りごと」起点の実践フロー

1) まずは「教育」と「見守り」

  • 病気の性質(意図的ではない/抑え込むほど反動が出やすい)を本人・家族・学校へ説明。
  • 睡眠・運動・生活リズムの整え、ストレス対処、からかい・叱責を避けるなどの環境調整。


2) 行動療法(第一選択)

  • CBIT/HRT/ERP:前駆感の気づき→代替する目立たない動きで置き換える訓練、反応妨害、トリガー同定と回避・調整。
  • α2作動薬:グアンファシン、クロニジン。眠気・血圧低下に注意しつつ、軽~中等度やADHD併存に適合。
  • ドーパミン遮断薬:アリピプラゾール、リスペリドン等。効果は強いが代謝・錐体外路・高プロラクチン血症など副作用に目配り。
  • VMAT2阻害薬(テトラベナジン等):海外で選択肢。わが国での適用・入手性は要確認。
  • その他:トピラマート、ボツリヌス毒素注射(局所で目立つ運動チックに)。

学校・家庭で今日からできる支援

  • 叱らない・止めさせない:我慢指示は反動で悪化しがち。代わりに短時間の退室可などの調整を。
  • からかい・いじめ対策:クラス説明は本人の同意を得て、事実に基づいた理解教育を。
  • 評価の工夫:口頭試問や時間延長、別室受験など。
  • セルフヘルプ:前駆感の記録、トリガー(疲労・特定教科・照明)探し、マイクロ休憩の導入。




誤解を解くQ&A

研究最前線のハイライト(2024–2025)



受診前にまとめておくと良いこと(チェックリスト)

  • 症状の始まりと経過(いつ、どの場面で増える? 1日の中での波は?)
  • 前駆感の有無と内容(どこがムズムズ? 置き換えられる動きは?)
  • 学校・家庭での具体的な困りごと(授業、友人関係、疲労、痛み)
  • 睡眠・生活リズム・ストレス要因
  • SNSや動画視聴の内容・時間(FTLB鑑別の手がかり)




保護者・教育現場・本人へのメッセージ

参考リソース(信頼できる出発点)

  • 日本小児神経学会監修:小児チック症診療ガイドライン(2024)
  • American Academy of Neurology(AAN)治療推奨
  • CDC:Behavioral Treatment for Tics(2025年更新)
  • 総説・レビュー(2024):FTLBの現状整理、CBIT比較試験




まとめ

  • チック症はよくある神経発達症で、行動療法が第一選択
  • 2024年の国内ガイドライン整備で、学校・家庭を巻き込んだ段階的支援がより取りやすくなりました。
  • パンデミック以降はFTLBの鑑別が重要。拙速な決めつけではなく、教育と支援をベースに。

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