
子ども同士のケンカや「ぼくが先!」「ずるい!」という衝突は、発達の途中にあるエグゼクティブ・ファンクション(EF:実行機能)がまだ育っている最中だからこそ起きがち。
EFは「①抑制(がまん)」「②ワーキングメモリ(頭のメモ帳)」「③認知的柔軟性(切り替え)」の3要素からなり、順番待ち・交代・ルール理解といった集団の基本スキルと深く結びついています。研究でも、家庭や保育での遊びがEFや自己調整を伸ばし、対人トラブルを減らすことが示されています。(PubMed)
さらに近年のレビューや介入研究では、ルールのあるゲーム(特にカード・ボード・反応系の遊び)が抑制・注意・作業記憶をバランスよく刺激することが報告されています。運要素が高すぎない現代ボードゲーム群は、とくにEFの活性化に寄与するという知見もあります。(PMC)
以下では、家にある物で今すぐできて、順番・交代・ルール理解が自然に身につく「おうち遊び」5選を紹介します。年齢目安と発達ポイントも添えました。
目次
1. サーブ&リターン読み聞かせ「合いの手BOOK」
2. キッチンタイマーで「60秒・交代プレイ」
3. 「色で反応!」スピードカップスもどき
4. 協力パズル「家族で1チーム・ミッションクリア」
5. 「お店屋さんロールプレイ」—値札と予約帳つき
なぜ「遊び」がトラブル減に効くの?
導入と運用のコツ(専門用語もやさしく)
よくある悩みへの対処
まとめ:今日から始める3ステップ
参考(興味があれば)
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1. サーブ&リターン読み聞かせ「合いの手BOOK」
ねらい:順番の意識/相手の合図を待つ抑制/ルールの共同形成
準備:お気に入りの絵本1冊。大人が“サーブ(投げかけ)”、子どもが“リターン(応答)”を交互に行う合図カード(○=話す/✋=待つ)を紙で用意。
遊び方
- 大人が1ページ読んだら「○」を見せ、子どもが擬音やセリフを“合いの手”で返す。
- 次のページは「✋」で“待つ”を体験。1ページごとに話す→待つを交代。
- 子どもが慣れたら、どこで○/✋を出すかを一緒に決める(ルール共同決定)。
ポイント
- 「合いの手の順番」を視覚化し、待つ→応えるの往復(サーブ&リターン)を体で覚えます。こうした応答的なやりとりは、言語と社会性の土台づくりに有効です。(developingchild.harvard.edu)
目安年齢:2歳半〜小1(未就学は合図を大きく、低学年は自分で合図役も担当)
2. キッチンタイマーで「60秒・交代プレイ」
ねらい:交代の納得感/切り替え/見通し
準備:タイマー(スマホでもOK)、遊び道具は何でも。
遊び方
- まず「1回60秒」で合意。タイマーが鳴ったら必ず交代。
- 待つ子には“観察ミッション”(次にやりたい技のチェックなど)を渡し、待ち時間の意味を持たせる。
- うまくいったら「90秒」「2回交代で1セット」など段階的ルール変更を共同で決める。
ポイント
- 時間を可視化すると交代のトラブルが減ります。見通しと予測はワーキングメモリの支え。ゲーム形式の短いサイクルは抑制と切り替えを鍛えるとする研究とも整合します。(PMC)
目安年齢:3歳〜小3(年齢に応じて30–120秒で調整)
3. 「色で反応!」スピードカップスもどき
ねらい:抑制(間違えて手を出さない)/注意の切り替え/公平な順番決定
準備:紙コップ5色×各1、色カード(赤・青・黄・緑・黒)。ベルがあればベター。
遊び方
- 親が色カードを1枚めくり、「赤→青→黄」の順にタワーを作れた人が勝ち。
- 「黒カードが出たら手を膝に置いてストップ」の反応抑制ルールを追加。
- 勝った人は次の合図役を担当=順番のローテーションを内在化。
ポイント
- 市販の反応系ゲーム(Dobble, Ghost Blitz, Speed Cups など)で示される素早い識別→ルール適用→抑制の流れを、手作りで再現。EFの抑制・作業記憶・注意制御を総合的に刺激するジャンルです。(journal.kurasinstitute.com)
目安年齢:4歳〜小4(カード枚数・並びの長さで難度調整)
4. 協力パズル「家族で1チーム・ミッションクリア」
ねらい:ルールの合意形成/役割交代/視点の切り替え
準備:ジグソーやマグネットブロック、LEGOなど。役割カード(探す人/組む人/監督役)を用意。
遊び方
- 1ラウンド3分。役割カードを順番に交代しながらミッション(例:角4枚→縁→中央)をクリア。
- 「監督役」は口出し禁止・指差しのみなどメタルールを設定。
- ラウンド終了後、役割の感想を30秒ずつ共有。
ポイント
- 協力タスクは相手の手番を見る・待つ・次の自分の行動を計画する連鎖を促します。運動・パズル・言語遊びいずれもEFへ好影響を示した最近のRCTも報告されています。(サイエンスダイレクト)
目安年齢:4歳〜小6(役割の数とメタルールの厳しさで調整)
5. 「お店屋さんロールプレイ」—値札と予約帳つき
ねらい:順番管理/社会ルールの理解/役割交代
準備:紙幣(手作りでOK)、値札、予約帳(順番リスト)。役割カード(店員/客/警備員)。
遊び方
- まず営業時間(5分)と人数制限(入店は2人まで)を決め、予約帳に来店順を記入。
- 1回の営業を終えたら役割交代。
- トラブルが出たら予約帳を見て“ルールに照らす”経験を共有。
ポイント
- 役割交代の小集団ルール遊びは、注意・記憶・抑制の協調を促し、自己調整の実践の場になります。教育現場でもルールのある小集団遊びが順番待ちの力に効くと教師が評価しています。(Frontiers)
目安年齢:3歳半〜小3(値札や営業ルールを子どもが自作できると尚良)
なぜ「遊び」がトラブル減に効くの?
- 脳の回路は“やりとり”で育つ
乳幼児期のサーブ&リターン(呼びかけと応答のキャッチボール)は、言語・社会性の基盤となる脳の回路形成を支えます。順番を守る経験の最小単位でもあります。(developingchild.harvard.edu) - ゲームはEFの総合トレーニング
ルールを読み解き、覚え、反応を抑制し、状況に合わせて切り替える——この一連はEFのコア。運要素が低い現代ボドゲや反応系ゲームは、これらの要素を短いサイクルで何度も回せます。(PMC) - 実証的な後押し
小児科領域や教育研究は、親子・仲間との遊びが社会情緒・言語・自己調整を促進し、ストレス緩衝にも役立つと報告。自由度と子どもの主体性が保たれるほど効果が高いことも示唆されています。(PubMed)
導入と運用のコツ(専門用語もやさしく)
- ルール共同決定:大人が一方的に決めず、「どうする?」と子どもと合意形成。当事者意識が上がり、遵守率が高まります。(The American Montessori Society)
- メタルール:ゲーム外の約束(「ベルが鳴ったら全員ストップ」など)。まずメタルール→個別ルールの順で確認すると混乱が減少。
- スモールステップ:成功体験が積み上がるよう手番時間や難度を短く・少なく。EFの発達段階に合わせ、見通しと即時フィードバックを用意。(PMC)
- 待ち時間の意味づけ:「観察ミッション」「次の戦略メモ」など待つことにも役割を与える。抑制だけでなく計画(プランニング)も伸びる。(PMC)
よくある悩みへの対処
- 「順番を守れない」
→ 可視化(タイマー・予約帳)+交代の前提を事前合意。最初は“交代のためのゲーム”から始める。(HealthyChildren.org) - 「負けると荒れる」
→ 協力パズルや非競争ラウンドを混ぜ、役割交代で成功体験を担保。 - 「大人が口を出しすぎる」
→ 子どもの選択と自由度を確保。指示が増えたら“監督役は指差しのみ”などメタルールで制御。(The American Montessori Society)
まとめ:今日から始める3ステップ
- 家族でメタルールを1つ決める(例:ベルで全員ストップ)。
- 5分×2ラウンドの短時間設計で成功体験を積む。
- ラウンド後は30秒のふりかえり(良かった交代/次に変えるルール)。
遊びは“しつけの代替”ではなく、トラブルを未然に減らすための脳と心の練習です。今日の5選を家にある物で回し、順番・交代・ルール理解を“面白い”で包んでいきましょう。近年の研究と臨床的な示唆は、その背中を力強く押してくれています。(PubMed)
参考(興味があれば)
- American Academy of Pediatrics「The Power of Play」:親子の遊びが自己調整や言語、対人スキルに与える影響。(PubMed)
- Harvard Center on the Developing Child「Serve and Return」:応答的やりとりの重要性。(developingchild.harvard.edu)
- 反応系ボードゲームとEFの関係(レビュー・実証研究)。(journal.kurasinstitute.com)
- パズル・言語・運動遊びの介入でEFが改善したRCT。(サイエンスダイレクト)
※本記事は2026年1月時点の知見をもとに構成しています。
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