自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションや行動に影響を与える発達障害です。
特に就学前のお子さんにおいては、早期発見が重要となります。この記事では、自閉スペクトラ 症の特徴と早期発見のメリット、年齢別に見られる可能性のある兆候を解説し、もし自閉スペクト ラム症を疑う場合の親が取るべきステップについてもご紹介します。
目次
1.自閉スペクトラム症とは?
2.早期発見の重要性とは?
3.年齢別特徴
4.自閉スペクトラム症の兆候を発見したらどうすれば良い?
1.自閉症スペクトラム症とは?
症状は個人差が大きいため、一概に「こうである」とは言い切れません。しかし多くの場合では社会性やコミュニケーション、想像力等の特性が現れることが知られています。
1. 社会的相互作用の困難
自閉スペクトラム症の子どもにとって、社会的なやりとりは特に難しいことがあります。
・アイコンタクトの欠如
通常、子どもは他人との交流の際に自然と目を合わせますが、自閉スペクトラム症の子どもは視線を避けたり、他人の目を見つめることが少ないです。
・共感の欠如
他人の感情を読み取ったり共有することが難しい場合があります。他の子どもが喜んでいる時に興味を示さなかったり、悲しい時に反応が薄いことがよくあります。子どもの気持ちを言葉で伝えたり、絵本を通して感情の表現を学ぶ練習が重要です。
2. コミュニケーションの遅れ
言葉やジェスチャーを通じたコミュニケーションが通常よりも遅れることがあります。
・言葉の発達遅延
通常では2歳頃までに簡単な単語を話し始めますが、自閉症の子どもはその発達が遅れ、
特定の言葉を繰り返す「エコラリア」という現象が見られることもあります。
※エコラリアとは‥他人の言葉をそのまま、または少し時間を置いてから繰り返す行動のこと。
・非言語的コミュニケーションの欠如
言葉だけでなく、指さしやうなずき、手を振るなどの非言語的なコミュニケーションも発達が遅れることがあります。
3. 反復行動と限定された興味
特定の行動や物事に強く執着することがよく見られます。
・ルーチンへの強いこだわり
日常の小さな変化に対して非常に敏感で、変化に対して不安やイライラを示すことがあります。1日のスケジュールを提示するなど、見通しを持たせる対応が必要となります。
・特定の物や活動への執着
特定のおもちゃや活動に異常なまでに執着することがあります。この場合、無理にその活動を中断させるのではなく、興味を他の活動に広げるよう促す工夫が求められます。例えば、興味の対象を使って新しい遊び方を提案するなど、徐々に多様な興味を引き出す方法が有効です。
4. 感覚過敏や鈍感
感覚に対して非常に敏感または鈍感なことがあります。これには、音や光、触覚、味覚、匂いなどへの反応が含まれます。
・音や光に対する過敏さ
大きな音や明るい光に対して過剰に反応する場合があります。このような場合は、静かな環境や落ち着ける場所を提供することが大切です。また、サングラスや耳栓などを使って過敏な感覚を和らげる対策も検討しましょう。
・特定の食べ物や服の素材への敏感さ
自閉症の子どもは、特定の食感や服の素材に敏感なことがあります。無理に押し付けるのではなく、少しずつ異なる素材や食感に慣れさせるための段階的なアプローチが推奨されます。
5.その他
・注意障害
集中力が維持できない、気が散りやすい、特定の刺激に過度に集中してしまうなどがあります。
・低緊張(筋緊張の低下)
筋肉の緊張が通常よりも低く、姿勢を保つのが難しい、全身がだらしなく感じられるなどの特徴が見られます。
・運動協調性障害(発達性協調運動障害、DCD)
手先の細かい動作や全身を使った運動が不器用で、学習や日常生活に影響を与えることがあります。ボールを投げたりキャッチしたりする動作など、身体協調が必要な活動で困難を示します。
これらの症状は自閉症のある個人によって異なり、それぞれの症状が全ての人に当てはまるわけではありません。それぞれの症状は他の発達障害や神経発達状態と重なることが多いため、個別の評価と適切な支援が重要です。
2.早期発見が重要な理由とは?
自閉スペクトラム症の早期発見は、子どものその後の発達において極めて重要な役割を果たします。早期に自閉スペクトラム症の兆候を認識し適切な支援を受けることで、子どもの社会的スキルやコミュニケーション能力・学習能力が大きく向上する可能性があります。以下に、早期発見の重要性について詳しく説明します。
1. 社会的スキルやコミュニケーション能力の向上
早期に専門的なサポートを受けることで、他者とのコミュニケーションや社会的スキルを効果的に習得できるようになります。特に作業・言語療法や社会的スキルトレーニングを取り入れることで、子どもが日常生活での対人関係において適切な反応を示し、他者と意思疎通を図る力が向上します。研究によると2歳から5歳までの間に適切な支援を受けた児は、学齢期における社会的スキルの向上が著しいことが報告されています。
2. 学習能力の促進
特性に対応した教育を受けることで、子どもの学習能力を最大限に引き出すことができます。
障害の度合いに合わせた学習内容や環境・教材を活用することで、個々の強みを活かした教育が可能となります。学業においても大きな成果を上げることが期待できます。
3. 行動の改善と適応力の強化
自閉スペクトラム症児が日常生活で直面する困難を軽減し、自立心を育むことができます。
特に、作業療法や認知行動療法(CBT)・構造化教育(TEACCHプログラム)は、日常的な行動改善や感情調整に効果的です。こうした介入により、子どもは新しい状況や環境に柔軟に適応できるようになり、不安やストレスを減らすことができます。
4. 長期的な人生の質の向上
早期発見と介入により、子どもは学業やキャリアにおいても成功する可能性が高まります。適切な支援を受けた児は、より良い就職機会を得たり、安定した人間関係を築くことができるようになることが多いです。また、家族や周囲の理解とサポートも早期に得られることで、本人の自立を助け、より豊かな人生を送る基盤が築かれます。
3.自閉スペクトラム症の年齢別特徴
0-2歳
◼︎生後数ヶ月で通常は見られる社会的微笑(ママやパパが触れた時ににっこり笑うなど)が少ないか、まったくない。
◼︎アイコンタクトが少ない: 親と目を合わせることが少ない。
◼︎名前に反応しない: 名前を呼ばれても振り向かないことが多い。
◼︎繰り返し行動: 手を振る、物を揺らすなどの行動を繰り返す。
3-4歳
◼︎言葉の遅れ: 言葉の発達が明らかに遅れている、または非常に限られた語彙しか使用し ない。
◼︎遊びの偏り: 想像力を使った遊びが少なく、物の並べ替えや分類など繰り返し行動を好む。
◼︎感情表現の困難: 喜びや悲しみを表現するのが難しい、もしくは少ない。
5-6歳
集団生活の中で以下のような振る舞いがより顕著になる可能性があります。
◼︎社会的スキルの苦手: 同年齢の子どもたちとの相互的なやりとりに困難を抱える。
◼︎ ルーチンへの強い依存: 日常生活の小さな変化に過敏に反応する。
◼︎特定の興味への集中: 特定のトピックや活動に異常なほどの興味を示す。
◼︎全体指示での理解の困難
7歳以上
学齢期に入ると、以下の特徴がより顕著になり、新たな課題が現れることがあります。
◼︎社会的理解の欠如: 冗談や比喩、社会的な暗黙の了解が理解しにくい。
◼︎感情調節の困難: ストレスや怒りを適切に処理するのが難しいことが多い。
◼︎学習の遅れ: 学業における特定の課題が浮き彫りになる。
「自閉症スペクトラム症(ASD)ってどんな症状?障害の特徴や早期発見のメリット、年齢別の早期発見のためのポイントを教えます。
4.自閉スペクラム症の兆候を発見したらどうすれば良い?
まずは専門の小児科医や発達障害支援センターに相談することが大切です。他にも直接の診断はできませんが、保健所や子育て支援センター・児童相談所等でも発達に関する相談は可能です。
結論
早期に療育を開始することで子どもの能力を最大限に引き出し、社会的な適応を助けることができます。また、地域の発達支援施設や学校の特別支援教育プログラムを活用することで、子どもが一貫したサポートを受けることができます。こうした連携により家族は子どもの発達をサポートするための適切なアドバイスやリソースを得ることができ、安心して育児に取り組むことができます。
家庭でできることとしては子どもの興味や特性を理解し、それに合わせた支援を行うことが大切です。しかし特性に合わせた支援と言われても何をすれば良いかわからないことが多いと思います。
そんな時はディアーズ1stにご相談ください。
ディアーズ1stでは発達障害専門の作業療法士が発達に関する相談を無料で聞いております。医療機関にいきなり相談するのは不安・発達の遅れが気になる・自宅での支援がわからない等気になることがあれば、ご気軽に以下よりご相談ください。